2005年08月27日

悪の人面瘡

jk.gifネット空間にもリアル社会にも詐欺、騙りが横行している。うようよ
している。妖しい蜘蛛の巣を張り巡らしている。

「石川や浜のまさごは尽くるとも世に盗人の種はつきまじ」

釜茹でになるまえの石川五右衛門が辞世の句、あるいは捨てぜりふを残し
ているように、ある程度の年を重ね、世の中を見続けるとわかることだろ
うが、悪いことをするやつは、いなくならないのである。

カール・シファキス著『詐欺とペテンの大百科』がおもしろい。
著者は元UPI通信の記者で、作り話、でっち上げ、贋作、悪ふざけなど、あ
らゆる騙しの事例を集めている。マンハッタン島をまるごと売った男の話
など、スケールの大きなものから寸借詐欺、博打のイカサマまで、こうも
人間は人間を騙すものかと、怒りよりも、むしろおかしさがこみあげてく
る。犯罪的な詐欺だけではなく、芸術としての騙し、マーケティング上の
騙し、大衆扇動型の騙しなどもあり、人の心理の研究材料としても読める。

不思議なことに、日本で流行の「おれおれ詐欺」「架空請求」「リフォー
ム詐欺」に似た手口の詐欺もある。

「すべての手口は、古くからある詐欺の新しい形にすぎない」
と著者が語るように、いくつもある既存のパターンに、新しいニュアンス
を含めたり、新技術と絡めたりすれば新種の騙しができあがる。

詐欺はなくならない。悪いことをするやつは、いなくならない。ある日突如、
人は人を騙し始める。

管理人は、これを悪の人面瘡(じんめんそう)と名付けたい。
まず顎でも股でも背中でも、突然に宿る。容易に治らない。意志を持ち始め、
しゃべる、笑う、食う、酒を飲むようになる。あるいは女を欲しがるように
なる。そして人面瘡は伝染し、横のつながりを持つようになる。
あらゆる世界に棲息しているのである。


●詐欺とペテンの大百科 カール・シファキス/鶴田文 青土社

●ネット社会の犯罪から身を守るためのセキュリティポリシー導入ガイド
ダニエル・S・ジェイナル /平松徹 翔泳社

●超完全詐欺マニュアル 三木孝祐 泉書房

posted by 読書人ジョーカー at 15:52| Comment(0) | ノンフィクション | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年08月21日

ぼくたちの洗脳社会

ぼくたちの洗脳社会

インターネットの世界で神と呼ばれる人々がいる。
すぐれたソフトウェアを無料で配ったり、あるいは「2ちゃんねる」など
に内部情報を流したり、とにかく大きくウケることをやってくれる人がそ
う呼ばれる。神は一神教のGodではなく、八百万(やおよろず)の神で、
どこにでもいる。

『ぼくたちの洗脳社会』を読む。
著者の岡田斗司夫氏は、いわゆるオタクの人のようである。当然、その未
来予測や時代分析もオタク的ではあるが、これがなかなか読ませる。とく
に「マルチメディア中世」というキーワードが、いまの感覚に響く。

「マルチメディア中世」の世界では、資源を浪費することが疎まれる。恥
ずかしい行為となる。「だから若者たちはアーティストやプログラマーや
研究者といった、資源をほとんど浪費しない職業につきたがります」となる。

さらには、昔の中世と同じように内面へ内面へと向かう。「マルチメディ
ア中世」では、絶対的な神ではなく、それぞれに「唯一無二の自分」を大
切にする。「好き」とか「おもしろい」という気持ちが重要となる。

そうした気持ちのエネルギーは、制約や我慢の多い営利活動ではなく、た
とえば非営利活動へと向く。ここでオタクがでてくる。オタクたちの主催
する漫画同人誌のコミケ(コミックマーケット)の熱気などが例としてあ
げられる。

また、マルチメディアやインターネットの進化は、洗脳という行為をマス
メディアに独占させない。
「自由経済競争が終わる。自由洗脳競争が始まる」が本書の帯の惹句である。

自由洗脳社会における資本は、経済資本ではなく、幻想資本である。得ら
れる利益は幻想、すなわちイメージだという。これに成功した企業が多く
のサポーターを得て伸びる。それどころかドラッカーの『非営利組織の経
営』を引き、アマチュアグループによる組織、ボランティアが活動する組
織こそ主流になるという。

「資本は小さくても洗脳力では爆発的な力」を持つ組織が未来社会では優
良であると。

ネット空間では、ひとつの出来事に関して、無数の意見や解釈が生まれ、
議論が始まる。「死ね」「知ったかすんな」といった罵りあいが始まる。
他人の考えを頭から否定し、価値観を押しつけあう風景がよくみられる。
これも洗脳合戦と呼べるのかもしれない。あるいは自分がどれだけ正しい
か、人から支持されるのかという自己確認。経済的利益はなにもない。だ
けど、みんな必死である。


posted by 読書人ジョーカー at 09:37| Comment(0) | ノンフィクション | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年08月19日

4次元立方体のビジョン

度胸星 (02)

限られた数学者、科学者だけが直観できたビジョンも、いまはCGの世界で、
凡人でも、なんとなく実感できるようになっている。
あくまでなんとなくだ。

英国の数学者ヒントンが提唱した第4次元問題(縦横高さの3軸に対して
直角な次元)。
天文学者ヴァン・マーネンは、この4次元立方体のビジョンを得たといわ
れるが、それはどのようなイメージだったのか。

ちなみにアインシュタインの特殊相対性理論における4次元時空(ミンコ
フスキー時空)はx,y,zの空間3次元に、時間一次元tを加えて構成される
もの。光速度一定の原理によって、速く動いている人の方の時間がゆっ
くり進むのがよくわかるようになっている。

超次元立方体を扱ったSFコミックに『度胸星』がある。

NASAが極秘に火星へ送り込んだチームからの連絡が途絶えた。
不可思議なことが起こっているらしい。救出オペレーションに日本の
NASDAも参画し、飛行士を一般公募することになった。地球と火星は、
公転軌道上、約2年2カ月周期で近づく。救出船は、このときを狙って
打ち上げられる。

数万人の応募者の中から選ばれた訓練生たちは変わり者ばかりだった。
不可思議な人間たちだった。まず主人公の度胸はトラックの運転手で、
誰よりも遠くまで荷を運ぶ夢を持っている。普段は温厚な青年だが、
土壇場に追い込まれると、鬼と化し、超人的な根性をみせる。

女性訓練生の茶々は感覚が鋭敏すぎて、他人が煩わしい。すべての生き物
のエゴイズムを嫌悪している。そういうわけで、命のまったくない場所、
すなわち火星に行きたいという。強靱な意志力を持つヤクザの息子、恐ろ
しく要領のいい青年、中年物理学者の坂井夫婦など、それぞれのキャラク
ターが濃い。バランスの取れた優等生はいない。欠陥は多いが、何かが異
常に突出した人間たち。
NASAは直感したのかもしれない。宇宙はなんでもありなのだと。

火星の居住モジュールで救出を待つNASAの飛行士たちは、奇妙な超立方体
に虐められていた。超立方体は変幻自在で無敵である。人を飲み込んで
「裏返し」たり、衛星フォボスに瞬間移動させたりする。

超立方体からみると、われわれは平面に生きる「紙人間」にすぎない。
立体的な視点がないのである。
「人間は、いつまでも地球にへばりついていてはいけない」
新しいビジョンが必要ということかもしれない。


posted by 読書人ジョーカー at 16:44| Comment(0) | 劇画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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