2006年01月23日

「六平太」の忍ぶ恋

恋の至極は、忍ぶ恋と見立て申し候。
逢ひてからは、恋のたけが低し。
一生忍びて思ひ死にする事こそ、恋の本意なれ。
                      山本常朝「葉隠」より

jk.gif六平太という渋い脇が出てきた。
NHK大河ドラマ「功名が辻」のほうの話である。
演じるのは香川照之で、女優の浜木綿子(はまゆうこ)を母に、三代目市
川猿之助を父に持つ、毛並みのいい役者である。

千代は幼いころの記憶を胸いっぱいに、一豊に忍ぶ恋をつづけていた。逢
えずに忍ぶ恋だからこそ、どうにもならないほど思いがふくらんいた。そ
れが、再会することで弾けた。破裂して、勢いが止まらなくなったのが、
第3回放送分における千代の激烈な行動でしょうね。
千代役の仲間由紀恵は、目が輝いていた。一豊に茶を出す場面、あのとき
の目は、たしかに恋する女の目であったと思う。

いっぽう、六平太は生き別れとなった千代を探していた。が、再会した千
代の心は一豊にあった。恋する思いを知るからこそ、六平太の忍ぶ恋はつ
づく。千代の恋を助けることでつづく。

恋の至極は、忍ぶ恋と見立て申し候。

相手とむすばれるだけが恋ではない。相手に恋の負担をかけるな。恋のた
けが低くなる。生涯思い続けて思い死にしてみろ。それが最高の恋である。

六平太は生涯にわたって千代を守り通し、最後は千代の盾となっていのち
を落とす。ついには忍ぶ恋を完成させるのである。葉隠れには、こうも書
いてある。「武士たる者は死に狂ひの覚悟が肝要なり」と。

六平太は、原作者の司馬遼太郎が小説世界に創造した人物だろう。司馬は、
しばし影のように生きる人間を絡ませて、物語をふかめる。
忍ぶ恋は、誰にでもあるものかもしれない。もちろんその相手は、いまの
夫や妻ではないだろう。
拾遺集に、こういう歌がある。

忍ぶれど 色に出にけり わが恋は ものや思ふと 人の問ふまで(兼盛)

思い当たる人は、気をつけたほうがいいかもしれない。

●『葉隠』関連書籍



posted by 読書人ジョーカー at 10:08 | Comment(0) | 「功名が辻」関連
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