今回、一豊(上川隆也)と千代(仲間由紀恵)は、深い目をした観察者
のようだった。
功名が辻、第32回「家康の花嫁」。
「番組で紹介した『旭姫の供養塔』は、静岡県静岡市の瑞龍寺にありま
す。供養塔を見学することはできますが、一般のお墓の中にあるので、
お静かに願います」
-NHK「その時歴史が動いた」公式サイトより-
確かに真新しい墓石に混じって、体をやや傾げるような格好で古びた供
養塔が建っている。
旭は京の東福寺に葬られたが、家康は駿府の瑞龍寺に供養塔を建て、永
代供養を命じた。
のちに秀吉もここを訪れたという。
正室がいないとはいえ、家康には大勢の側室と子がいたようだ。
にもかかわらず、44歳の旭との、夜のことをきちんとこなしたといわれる。
この婚姻に関して、秀吉と家康は旭のことをかなり不憫に思っていたよ
うな気がする。
「この世で流す涙は全部流してしまった。もう泣きはしない」
流す涙をなくしてしまったら、あとの人生は短いのかもしれない。
旭の家康との生活は2年あまりだったようだ。
母大政所が病を得たので、見舞いのために上洛した。
大政所は恢復したが、旭は家康のもとには戻らず、聚楽第で48年の生涯を
閉じている。
秀吉の奇跡的な出世に翻弄された一族のことは、司馬遼太郎「豊臣家の人々」に詳しい。