2006年08月21日

無事是名馬

法秀尼が他界した。
千代(仲間由紀恵)の深い涙が、一豊(上川隆也)の悲しみを和らげて
くれたような気がした。
功名が辻、第33回「母の遺言」。

上川隆也は「無事是名馬を目指す」の精神で、大河ドラマという長丁場
を戦い切る思いを表していた。

「無事是名馬」は、突出した力はなくても、怪我をしないで長く走る競
走馬こそ名馬であるという意味合いの、菊池寛が放った名言。「無事是
貴人」を捩ったものらしい。
「無事是貴人」は、臨済義玄の語録「臨済録」にある言葉で、歳末など
に大過なくすごせた1年に感謝する気持ちの表現として使われることが
多い。もっとも禅語であるから本来は、いかようにでも深い意味を創り
出せる言葉だろうとは思う。

また、山本周五郎の短篇小説に「日々是平安」というのもある。
黒澤映画「椿三十朗」の原作ともなった。三船敏郎の演じた抜き身の刀
のようにギラギラした「椿三十朗」とやや違って、主人公は、のほほん
とした感じで気ままに人生を送っているような風である。

人間は特別なことをしないで、ただ生きていくだけでもいろいろ辛いこ
とがあるし、業のようなものは日々積み重なっていく。自分は何もしな
くても周囲の問題が飛び火してくることもある。怠けていたツケは必ず
あとから支払わされる。親はいつまでも生きているわけではないし、次
第に責任のようなものがのしかかってくる。
ただふつうに生きて、天寿をまっとうするだけでも人は貴いのかもしれ
ない。
「無事是名馬」となることは、大変な努力と気配りがいるのではないか
とも思う。

posted by 読書人ジョーカー at 09:36 | Comment(0) | 「功名が辻」関連
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