風呂から上がると床に敷き、その上に足を乗せて体を拭いていたことか
ら風呂敷という名がついたそうだが、江戸の人たちは、湯具や着物もさっ
と風呂敷に包んで銭湯から粋に出ていったらしい。
風呂敷は小さな物、大きな物、丸い物、長い物など、なんでもうまく包む。
一升瓶のようなへんてこなカタチも包めるし、包んでしまえば一升瓶の
長さだけの持ちものとなる。
風呂敷の面白さは、鞄や箱などの入れ物と違って、包む物にあわせて自
身の姿を自在に変化させるところにあるのかもしれない。
何かを風呂敷に包んで持っていく。帰りは折り畳んで懐に収めれば、手
ぶらで楽ができる。
持ち歩いてもじゃまにならないから、いざ、何かを持ち帰らなければな
らなくなったときにも重宝する。
包み方、結び方によって、担ぐ、背負う、抱える、提げるといった具合
に、どんなふうにも持ち歩ける。
風呂敷は単純な正方形の布だからこそ、変幻自在なのだろう。
小池環境大臣は、「もったいないふろしき」というものを考案したよう
だが、これはペットボトルから再生した布地に花鳥図をあしらったもの
で、循環社会を築いてきた江戸の風呂敷文化を広げていきたいというこ
とらしい。
スーパーなどでレジ袋を貰ってこないという、省資源を考える運動のひ
とつとして風呂敷を使う手もあるのだろうが、たんに風呂敷の不思議さ
を味わうという気持ちで使う方が楽しいのではないかと思う。
のれん、膝掛け、花瓶敷き、テーブルクロスなど、包むこと以外にも、
用途はいくらでもありそうな気がする。
「夏の夜に 風呂敷かぶる 旅寝哉」 小林一茶
一茶は、蚊帳の代わりとして風呂敷を使ったらしい。
風呂敷は昔、母親は普通に使ってましたね。なんともいえない落ち着きと優しさがありました。最近、ものを買っても包装を断ることが多いのですが、理由が自分でも分からなかったんですけど、人と人とのやりとりに優しさがなくなった気がするのかもしれません。この記事を読んでそんなことを考えてしまいました。