2006年06月20日

胡蝶の夢とは?

一豊(上川隆也)の腕の中で、光秀(坂東三津五郎)は闇に舞う蝶をみた。
「胡蝶の夢…」と呟いて果てた。
功名が辻、第24回「蝶の夢」。

『荘子』に「夢に胡蝶と為る」という一節がある。

荘周は夢の中で胡蝶となり、空をひらひらと舞っていた。自分が荘周であ
ることなどすっかり忘れて楽しんでいた。しかし目覚めてみれば則ち荘周
に戻った。はたして、荘周が夢で胡蝶となったのか。この人間の姿こそ胡
蝶の夢の中なのか。どっちなのかわからないという話。

光秀は縁あって信長に仕えた。
牢人の身から辛抱を重ねて大名にまでのぼりつめた。そして何の因果か主
君信長を滅ぼしてしまい、いま自分は落武者狩りの百姓に命を絶たれよう
としている。
「胡蝶の夢」のように幻じみた、現実感のあいまいな人生だったのかもし
れない。

信長の人生もまた「夢まぼろしのごとくなり」だった。
信長の事業を相続し、関白となって位人臣を極めた秀吉も「夢のまた夢」
だった。

司馬遼太郎の小説に『胡蝶の夢』がある。
近代医学という新しい学問を通してみた幕末から明治という時代、そして
医師松本良順、島倉伊之助、関寛斎のそれぞれの人生を描いた長編小説。
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2006年05月16日

不気味な秀吉

半兵衛が逝った。
一豊(上川隆也)と秀吉(柄本明)に静かに見送られた。
ドラマのなかでは、女っ気のない人生だったが、実際は美濃衆の娘を嫁と
していたようだ。
以後、策士・黒田官兵衛が秀吉の軍師として重い存在になる。

功名が辻、第19回「天魔信長」
一豊が千代(仲間由紀恵)からの手紙を読み終えると、半兵衛は、秀吉と
一豊にひと言ずつ遺した。
秀吉には、信長に代わって天下人となることを予言した。
一豊には、千代への恋をうちあけた。
秀吉は、座を外した。不気味な笑みを浮かべ、雨の空を見上げた。

秀吉は、あらゆることを的中させてきた半兵衛の「読み」に、薄く笑った
のか。
それとも天才軍師の末期の言葉が、恋の告白だったことを笑ったのか。

天魔とは、四魔のひとつで、六欲天の最上階、他化自在天に住む魔王のこ
とらしい。
信長が安土城に創造した天守閣も不気味だった。
地を見下ろす、炎のような赤に彩られた部屋がおそろしかった。
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2006年04月15日

「功名が辻」の意味とは?

功名が辻、タイトルの意味について→1月11日記事へ
【功名】手柄を立て名を上げること。また、そのような手柄。
【辻】道が十字形に交差したところ。十字路。みちばた。街頭。


今年も三分の一が過ぎようとしている。
大河ドラマ「功名が辻」も、放送14回を数えた。
一豊(上川隆也)は、まだ400石の身上で、功名の上り坂にある。
これから「功名が辻」の意味と主題が深まってくるのではないかと思う。

人の一生に主題などあるのだろうか。
現実に動いている人生は、ややこしいことを考えている暇などない。
泣きながら日々を生きていくだけで精一杯である。

市井に生きた人は、後世に語られることはない。
お祖父ちゃんは大酒飲みだったとか、お祖母ちゃんは働き者だったとか。
せいぜい、そのくらいだ。
だが、大きな功名をたてた人間は、のちの世にまで語り継がれる。
そして、その人がどう生きたかについて、後世のひとが評価する。
人それぞれの評価のひとつが、ドラマや小説のテーマとなったりする。

一豊の生きた場所は、功名を強く求める人間が集まった「時代の辻」であっ
て、その中心核に信長や秀吉がいた。
信長や秀吉には、どんな世を創るかというビジョンがあったが、一豊や堀
尾吉晴(生瀬勝久)、中村一氏(田村淳)は、自分の器量のなかで、ひた
すら功名を求めて精一杯生き抜くだけだ。
千代(仲間由紀恵)は、いくさを嫌い、いくさのない世を望むと言いなが
ら、一方では一豊を一国一城のあるじにするために、さまざまな策を授け
たりしている。

信長、秀吉、光秀など、あふれるような才能とエネルギーに満ちた人たち
は、派手に咲いて、パッと散った。「難波のことは夢のまた夢」だった。
それほどの才覚がなくても、自分をよく知り、人に慕われ、ひたすら真面
目で忠実に生きた一豊は土佐二十四万石の太守にまで上り詰め、子孫は江
戸期を通じてずっと大名であり、戦前までは華族だった。
家康は幼い頃今川の人質となり、信長に妻子を葬られ、いくさにつぐいく
さの人生を送ったが、最後に「元和偃武」で自ら武を封印し、三百年の太
平の世を創った。
「功名が辻」に集まった人たち、それぞれの性格や生き方を通して、また
それぞれの一生の主題がみえてくるだろうと想う。
posted by 読書人ジョーカー at 13:39| Comment(0) | 「功名が辻」の意味 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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