日経新聞(8月18日夕刊)に寄稿したエッセイで、板東氏は子猫を殺し
ていると「告白」した。
タヒチ島に住む氏は、雌の猫を三匹飼っているという。これらが子を産
むので、生れ落ちるや、子猫を隣の崖下の空地に放り投げているという
のである。氏は避妊手術という処理方法を選ばなかったようだ。
「私は自分の育ててきた猫の「生」の充実を選び、社会に対する責任と
して子殺しを選択した」
というのである。
ただし、タヒチはフランス領で、こうした行為はフランスの刑法に抵触
する可能性があると指摘する向きもある。
坂東眞砂子は「日本ホラー小説大賞」出身の作家といえるのかどうかわ
からないが、「蟲 」(角川ホラー文庫)という作品が同賞の第1回佳作
となっている。
「第6回日本ホラー小説大賞」の大賞作品となったのが、岩井志麻子の
「ぼっけえ、きょうてえ」(角川ホラー文庫)で、こちらは人間の子殺し、
すなわち、かつて日本の寒村で実際に行われていたという「間引き」の
話が物語を綴る上での大切な要素のひとつとなっている。
動物は「余分」に子を産むようになっている。
魚などは無数といっていいほどに産む。
それが自然のなかで、うまく育たなかったり、他の生き物に食われたり
して、ほとんどが親になるまで生きていない。自然に適正な量となり、
種が存続している。
自分で間引いたり避妊しなければならない人間と、そしてその人間社会
との関わりのなかで生きている家猫や家犬は、ともに奇妙な動物といえ
るのかもしれない。
子猫殺しで思い出すのは、筒井康隆の「池猫」という掌編である。
(「にぎやかな未来」所収/角川文庫)
男は少年の頃、飼い猫がやたらに子を産むので、しまいには面倒になって、
片っ端から近くの池に子猫を捨てるようになった。
成長し、実家を離れた男が、ある日帰省した。
ふと思い立って件の池を見に行った。
男はそこで、世にも恐ろしいものを目撃した。